「地域で何かイベントをやってみたい」
「昔あった祭りを復活させたい」
「子どもたちに思い出を残したい」

そんな思いから、祭りやイベントは始まります。

最初は、「やってみたい」という気持ちだけでも構いません。

しかし、いざ動き始めると、

スタッフはどうする?
お金はどうする?
会場は?
出演者は?
PRは?
協賛は?
当日は誰が何をする?

と、次々に考えることが増えていきます。

そして、いつの間にか、

「そもそも、なぜこの祭りをやるのだろう?」

という一番大切なことが、後回しになってしまうことがあります。

だからこそ、祭りやイベントを始めるとき、最初に考えてほしいことがあります。

それは、**「何をするかではなく、なぜ、この祭りをするのか」**です。

この記事では、これから地域の祭りやイベントを始める人に向けて、理念・目的・目標を整理し、そこから具体的な活動へつなげていく方法を考えます。


祭りは「一日のイベント」ではない

祭りというと、開催日の光景を思い浮かべる人が多いでしょう。

ステージがあり、出店があり、人が集まり、イベントが終われば片付ける。

しかし、主催者から見れば、それだけではありません。

開催する何か月も前から、

  • 企画を考える
  • 会場を確保する
  • 出演者を探す
  • スタッフを集める
  • 協賛をお願いする
  • 広報する
  • 関係者と調整する
  • 備品を手配する

といった準備があります。

そして開催後には、

  • 会計を整理する
  • 関係者にお礼をする
  • 参加者の反応を確認する
  • 問題点を振り返る
  • 次回に向けて改善する

という仕事があります。

つまり祭りは、開催日だけを切り取れば「イベント」ですが、主催者にとっては継続的な地域活動でもあります。

内閣府も、祭りなど地域の催物の運営を社会参加活動の一つとして紹介しています。祭りを単なる娯楽ではなく、地域社会への参加や関わりの一つとして考えることができます。

だからこそ、営利企業の活動でなくても、

「何のためにやるのか」→「実際にやってみる」→「結果を見る」→「次に改善する」

という考え方が役立ちます。


「何をするか」から始めない

イベントを企画するとき、多くの人は最初に「何をするか」を考えます。

「ステージを作ろう」

「音楽を呼ぼう」

「屋台を出そう」

「子ども向けのゲームをやろう」

もちろん、それも必要です。

しかし、企画を先に決めてしまうと、

「なぜ、その企画をやるのですか?」

と聞かれたとき、答えに困ることがあります。

例えば、「子ども向けの謎解きをやる」という企画があったとします。

それ自体は面白い企画です。

しかし、

「子どもたちに楽しんでもらいたい」

のか、

「地域の子どもたちに地域を知ってもらいたい」

のか、

「子どもと大人の交流を生みたい」

のかによって、謎解きの内容も、参加者も、場所も変わってきます。

つまり、

目的によって、最適な企画は変わります。

だからこそ、企画を考える前に「なぜ」を考えてみることが大切なのです。


「理念」「目的」「目標」は何が違う?

ここで、少し難しく感じるかもしれない「理念・目的・目標」を整理してみましょう。

理念=なぜ、この活動をするのか

その祭りが存在する理由です。

例:「地域の子どもたちが、大人になっても思い出せる場所をつくる」

目的=何を実現したいのか

理念を実現するための具体的な方向です。

例:「地域の子どもと大人が交流できる機会をつくる」

目標=どこまで実現するのか

今年の活動で目指す具体的な到達点です。

例:「子ども300人、地域店舗20店舗に参加してもらう」

つまり、

理念 → 目的 → 目標

という順番です。

そして、その先に具体的な企画や活動があります。

この順番を意識するだけでも、「思いついた企画を次々に追加していく」という状態を防ぎやすくなります。


理念は、格好いい言葉でなくていい

「地域活性化」

「地域の絆」

「伝統文化の継承」

こうした言葉は間違っていません。

しかし、これだけでは「具体的に何をしたいのか」が伝わりにくいこともあります。

そこで、一度こんな質問をしてみてください。

「この祭りがなくなったら、何が失われるのだろう?」

子どもたちが集まる場所でしょうか。

地域のお店を知る機会でしょうか。

高齢者と子どもが交流する機会でしょうか。

昔から続いてきた文化でしょうか。

地域住民が顔を合わせる機会でしょうか。

「この町に住んでいてよかった」と感じる瞬間でしょうか。

その答えの中に、その祭りが存在する意味が隠れているかもしれません。


「誰のための祭りなのか」を決める

次に考えたいのが、

「この祭りは、誰のためにあるのか?」

ということです。

「地域の皆さんのため」

でも構いません。

ただ、もう一歩踏み込んで、

「特に誰を大切にする祭りなのか?」

を考えてみましょう。

例えば、

  • 子どもたち
  • 高齢者
  • 若者
  • 地域の商店
  • 新しく地域に住み始めた人
  • 地域の伝統を守る人
  • 地域外から訪れる人

などです。

もちろん、一つに絞る必要はありません。

ただし、

「一番喜んでもらいたい人は誰なのか?」

を考えておくと、祭りの方向性が見えやすくなります。


理念が決まると、企画の選び方が変わる

例えば、

「地域の子どもたちが、大人になっても思い出せる祭りにする」

という理念を掲げたとします。

そうすると、必ずしも「有名な出演者を呼ぶこと」が最優先ではないと分かります。

むしろ、

  • 子ども自身が参加できる企画
  • 地域の大人と交流できる企画
  • 子どもが自分で作ったものを発表できる企画
  • 地域の歴史を知る企画
  • 思い出を残せる仕掛け

などの方が、理念に合うかもしれません。

反対に、「地域外からできるだけ多くの人を呼びたい」という目的なら、広報や出演者、観光との連携を重視することになるでしょう。

どちらが正しいのではありません。

理念によって、「良い企画」の基準そのものが変わるのです。


目標は「来場者数」だけにしない

祭りの目標というと、

「来場者1,000人!」

という数字を思い浮かべる人も多いでしょう。

来場者数はもちろん大切です。

しかし、それだけでは祭りの価値を十分に測れない場合があります。

例えば、

  • 初めて来た人を100人つくる
  • 地域のお店20店舗に参加してもらう
  • 新しいスタッフ10人を迎える
  • 「また来たい」という回答を200件集める
  • 「来年も開催してほしい」という回答を150件集める
  • 来年も協力したいという店舗を10店舗つくる
  • 「誰かに紹介したい」という参加者を増やす

といった目標も考えられます。

重要なのは、目標が理念や目的につながっていることです。


「成功した祭り」を先に想像する

ここで、一度未来を想像してみましょう。

祭りが無事に終わりました。

会場を片付けています。

スタッフと一緒に帰ろうとしています。

そのとき、

「今年、本当にやってよかった」

と思えるのは、どんな状態でしょうか?

来場者が多かったからでしょうか。

子どもたちが楽しそうだったからでしょうか。

地域のお店が喜んでくれたからでしょうか。

「来年も絶対やってください」と言われたからでしょうか。

新しい仲間ができたからでしょうか。

「この町に、この祭りを残すことができた」と思えたからでしょうか。

思い浮かんだものを、5~10個ほど書き出してみてください。

それが、あなたの祭りにとっての**「成功の条件」**になります。


そして、初めて「何をするか」を決める

ここまで考えて、ようやく具体的な企画を考えます。

例えば、

理念

「地域の子どもたちが、大人になっても思い出せる祭り」

目的

「子どもと地域の大人が交流する機会をつくる」

目標

「子ども300人、地域店舗20店舗が参加」

活動

「子ども向け企画をつくる」

「地域店舗との共同企画を行う」

「地域の大人が参加できるプログラムをつくる」

という具合です。

この順番なら、

「何となく面白そうだからやる企画」

を増やしにくくなります。

そして、企画を選ぶときにも、

「この企画は、私たちの目的に本当に必要だろうか?」

と判断できるようになります。


スタッフ募集も「理念」から始める

スタッフを集めるとき、

「祭りのスタッフ募集!一緒に盛り上げましょう!」

だけでは、参加する理由が伝わりにくいかもしれません。

それより、

「子どもたちに、地域の思い出を残す祭りを一緒につくりませんか?」

と伝えた方が、その活動に参加する意味が分かります。

人は「作業」だけではなく、その活動の意味に共感して参加することがあります。

だから、スタッフ募集の文章にも、祭りの理念を入れてみましょう。


協賛や寄付をお願いするときも同じ

企業や個人に協力をお願いするときも、

「祭りを開催するので、協賛してください」

だけではなく、

「私たちは、この地域で○○を実現するために、この祭りを開催します。そのために力を貸してください」

と伝える。

「何にお金を使うのか」だけではなく、

「何を実現するためのお金なのか」

を伝えることが重要です。

理念が明確なら、協力する側も「自分は何を応援するのか」を理解しやすくなります。


営利活動でなくても、PDCAは使える

ここで、もう一つ覚えておきたい考え方があります。

それがPDCAサイクルです。

PDCAとは、

Plan(計画)

Do(実行)

Check(確認・評価)

Act(改善)

という流れです。

「PDCAは企業が売上を伸ばすためのもの」と思われるかもしれません。

しかし、地域活動でも十分に使えます。

例えば、

「子どもたちが地域の大人と交流できる祭りにする」

と計画する。

実際に祭りを開催する。

「子どもたちは本当に交流できたのか?」

「地域のお店は参加してよかったのか?」

「スタッフの負担は大きすぎなかったか?」

「来年も参加したいと思ってもらえたか?」

と振り返る。

「来年は子どもと大人が一緒に参加できる企画を増やそう」

「スタッフの役割を分散しよう」

と改善する。

また次の計画を立てる。

これも立派なPDCAです。

営利目的かどうかは関係ありません。

「やりっぱなしにせず、経験を次の活動に生かす」

という考え方として捉えると、地域活動にも取り入れやすくなります。


祭りのPDCAは、難しく考えなくていい

PDCAという言葉が難しく感じるなら、もっと簡単に考えても構いません。

やる前

「今年は何を実現したい?」

やった後

「実際にどうだった?」

振り返る

「何が良くて、何が問題だった?」

次の年

「では、来年はどう変える?」

これだけです。

大切なのは、今年の祭りを来年の祭りの材料にすることです。

毎年、ゼロから始める必要はありません。


「何人来たか」だけではなく、「何が残ったか」を見る

祭りが終わったら、

「今年は何人来ましたか?」

だけではなく、次のことも確認してみてください。

  • 新しい仲間は何人できたか
  • 来年も協力してくれる人は何人いるか
  • 協力してくれる店舗は増えたか
  • 「来年も開催してほしい」と言ってくれた人は何人いたか
  • 「また来たい」と思った人はどれくらいいたか
  • 祭りを応援してくれる人は増えたか

これらも祭りの成果です。

場合によっては、来場者数以上に大切な指標になるかもしれません。


祭りは「開催日」で終わらせない

地域の祭りなら、

今年の祭り → 来年の祭り

というつながりがあります。

だからこそ、

「今年、何をするか」

だけではなく、

「今年、何を来年へ残すか」

を考えてみましょう。

参加者。

スタッフ。

協力店舗。

協賛企業。

写真や動画。

SNSでつながった人。

参加者から寄せられた声。

そして、

「来年もやってほしい」という気持ち。

これらはすべて、次の祭りにつながる資産です。


まずは紙1枚から始めてみよう

ここまで読んで、

「理念なんて難しそうだ」

と思う必要はありません。

紙を一枚用意してください。

そして、次の5つを書いてみましょう。

  1. なぜ、この祭りをやりたいのか?
  2. 誰に喜んでもらいたいのか?
  3. この祭りで何を実現したいのか?
  4. 今年、何を達成したいのか?
  5. 祭りが終わったとき、どんな状態なら「やってよかった」と思えるのか?

最初から完璧な文章を作る必要はありません。

箇条書きでも構いません。

むしろ、最初は自分の言葉で自由に書いた方がいいでしょう。

「書いてみること」が、祭りを始める最初の一歩です。


「やってみたい」を「やってよかった」に変える

祭りやイベントは、一人の「やってみたい」という気持ちから始まることがあります。

その気持ちは、とても大切です。

しかし、実際に動き始めると、やることはどんどん増えていきます。

だからこそ、忙しくなる前に、

「なぜ、この活動をするのか」

を決めておく。

そして、

理念 → 目的 → 目標 → 活動 → 振り返り → 改善

という流れをつくっておく。

そうすれば、最初は小さな活動でも、毎年少しずつ良くしていくことができます。

大切なのは、最初から完璧な祭りをつくることではありません。

「今年より、来年を少し良くする」

ことです。

最初は数人だった活動が、翌年には10人になり、その次の年には50人になる。

最初は知らなかった地域のお店が、協力してくれるようになる。

最初は参加するだけだった人が、翌年にはスタッフになる。

そんな変化が積み重なれば、祭りは少しずつ地域に根付いていきます。

祭りを始めるのに、大きな組織は必要ありません。

大きな予算も、最初から必要ではありません。

必要なのは、

「なぜ、この祭りをやりたいのか」

という、あなた自身の言葉です。

その一言が、仲間を集め、協力者を集め、参加者を集め、祭りを未来へつなぐ最初の一歩になるかもしれません。

祭りを「応援する人」も、最初から考えておく

最後に、もう一つ考えてみてほしいことがあります。

祭りには、

  • 開催する人
  • 参加する人
  • 手伝う人
  • 協賛する人
  • 情報を広める人
  • 見守る人

など、さまざまな関わり方があります。

そして、

「来年もこの祭りを続けてほしい」

と思ってくれる人も、祭りにとって大切な存在です。

Ohanakakeは、そんな「応援する」という参加の形を、祭りやイベントに広げていくことを目指しています。

祭りを始める人が、最初から一人ですべてを背負うのではなく、

「この活動を応援してくれる人を、どう増やしていくか」

も、最初から考えてみてください。

祭りをつくるのは、主催者だけではありません。

祭りを未来へつなぐのは、その祭りを「残したい」と思う人たちです。

参考・引用元
  • 内閣府「令和8年度『エイジレス・ライフ実践事例』及び『社会参加活動事例』の募集」
    地域の祭りなどを社会参加活動の一例として紹介しています。
    内閣府「社会参加活動事例」
  • 内閣府「選択する未来―主な政策の方向性」
    地域づくりにおける地域の主体性や、関係者がビジョンを共有して取り組むことについて参考にしています。
    内閣府「選択する未来」
  • 内閣府「内閣府におけるEBPMへの取組」
    目的を明確にし、合理的根拠に基づいて政策の効果を測定する考え方を参考にしています。
    内閣府「EBPMへの取組」

※本記事におけるPDCAの説明や祭りへの応用は、特定の書籍・資料からの直接引用ではなく、一般的なPDCAの考え方を地域活動に当てはめて整理したものです。