祭りの騒音苦情、主催者はどう対応する?

祭りやイベントを開催していると、「音が大きい」「夜遅くまでうるさい」「家の中まで音が響く」といった苦情が寄せられることがあります。

主催者にとっては、太鼓や笛、掛け声、音楽、アナウンスなどは祭りを盛り上げる大切な要素です。

しかし、会場の近くで暮らす住民にとっては、それらが日常生活に影響する音になることもあります。

実際、自治体にも祭りやイベントの騒音について、現在もさまざまな意見が寄せられています。

例えば富田林市では、だんじり祭りについて、拡声器やマイクの音、夜間の活動などに関する複数の意見が公表されています。同市は、祭礼が地域の歴史や暮らしと深く関係する一方、周辺住民への配慮も必要として、拡声器音量の自粛や夜10時以降の活動自粛などを関係団体にお願いしています。

では、実際に祭りの騒音について苦情が届いたとき、主催者はどのように対応すればよいのでしょうか。


1.まず「反論」ではなく、苦情の内容を受け止める

祭りの主催者が最初に避けたいのは、

「祭りなんだから、これくらい仕方がない」

と反論してしまうことです。

もちろん、祭りには音が必要な場合があります。

しかし、苦情を申し立てた住民にとっては、単なる「祭りの音」ではなく、睡眠、仕事、子どもの生活などに影響する問題かもしれません。

まずは、

「どのようなことで困っているのか」

を聞く。

「苦情に全面的に同意する」ことと、「相手の話をきちんと聞く」ことは別です。

最初に必要なのは、正しい・間違っているを判断することではなく、何が問題になっているのかを把握することです。まず、祭りの運営を改善するための情報の一つとして受け止めることが第一歩です。

2.苦情の内容を「記録」する

苦情を受けたら、可能な範囲で記録を残します。

例えば、

  • いつ苦情があったのか
  • どこから寄せられたのか
  • 何時ごろの音なのか
  • 太鼓、音楽、マイクなど何の音なのか
  • どの程度の時間続いたのか
  • 住民は何に困っているのか
  • その場でどのような対応をしたのか

などです。

ここで大切なのは、苦情を「クレーム件数」として処理するだけにしないことです。

同じ時間帯、同じ場所、同じ音について複数の声が寄せられているのであれば、そこには改善すべき原因があるかもしれません。

環境省の騒音問題に関する資料でも、苦情対応では、申し立て内容の把握、現場確認、測定、対策、効果の確認という流れが示されています。祭りにそのまま適用できるという意味ではありませんが、**「苦情を受ける→原因を確認する→対策する→効果を確認する」**という考え方は、主催者にとって参考になります。

3.苦情を受け付ける担当者を決めておく

祭り当日に突然苦情が入ると、

「誰が対応するの?」

という状態になりがちです。

そこで、開催前から苦情・問い合わせの担当者と連絡方法を決めておくことをおすすめします。

例えば、

「祭り当日の音や会場についてのお問い合わせは、こちらまで」

と電話番号やメールアドレスなどを案内しておく方法です。

大阪府が公表した音楽イベントの事例でも、近隣からの問い合わせ窓口を設置し、音量管理に配慮する対応が取られています。また、天候や風向きによって音が想定以上に届く場合があることも説明されています。

「どこに言えばいいのか分からない」という状態を作らないことは、主催者と住民双方にとって重要です。


4.可能なら、現場の状況を確認する

苦情を受けたら、主催者側でも状況を確認します。

例えば、

「住宅地から音が聞こえる」

という苦情なら、実際に住宅地側でどの程度聞こえているのかを確認する。

音響設備を使っている場合には、

  • スピーカーの位置
  • スピーカーの向き
  • 音量
  • 音が出ている時間
  • 周辺の住宅との位置関係

などを確認します。

ここで重要なのは、「苦情を言った人が正しいか、主催者が正しいか」を決めることではありません。

まず事実を確認することです。


その場でできる対策と、後日検討する対策を分ける

祭りの開催中に苦情が届いた場合、可能な範囲でその場の対策を検討します。

例えば、

  • 音量を下げる
  • スピーカーの向きを調整する
  • 不要なアナウンスを減らす
  • 終了時間を確認する

などです。

ただし、現場担当者の判断だけで、

「今後は絶対にこの音を出しません」

「来年から祭りを変えます」

などと約束する必要はありません。

その場でできることと、実行委員会などで検討することを分け、

「ご意見を受け止め、主催者内で共有して今後の対応を検討します」

という形でもよいでしょう。


6.苦情を「来年の改善」に活かす

祭りが終わって、

「今年も何とか終わった」

で終わらせないことも大切です。

苦情があった場合には、開催後に記録を振り返り、

「なぜ苦情が発生したのか?」

を考えます。

例えば、

「音量が大きかった」

だけではなく、

「住宅地に向けてスピーカーが設置されていた」

「夜間にもマイクを使っていた」

「開催時間を住民が把握できていなかった」

「苦情を受け付ける窓口がなかった」

など、原因を細かく分解します。

横浜市でも、2025年に開催されたイベントについて近隣住民から騒音への意見が寄せられ、市が主催者に意見を共有し、音響対策として低音を抑えられるスピーカーの導入などを確認した事例があります。

苦情を「嫌な出来事」で終わらせず、次回の運営改善につなげる。

これが主催者にとって最も重要な対応の一つです。


7.「苦情をゼロにする」だけを目標にしない

最後に、もう一つ大切なことがあります。

それは、

「苦情をゼロにすること」だけを目標にしないことです。

祭りには、音を出すことそのものが文化や演出になっている場合があります。

また、祭りに参加する人、主催者、出演者、近隣住民では、求めているものが違います。

すべての人が100%納得する状態を作ることは、簡単ではありません。

だからこそ、

「苦情が来ない祭り」ではなく、「苦情や意見が届いたときに、きちんと向き合える祭り」

を目指すという考え方も必要なのではないでしょうか。


「苦情」を「声」として受け止める

ここまで紹介した対応を実践するためには、そもそも住民が主催者に意見を伝えやすい環境をつくることも重要です。

例えば、祭りの公式サイトなどに、

「今年の祭りについて、皆さまの声をお聞かせください」

という窓口を設ける方法があります。

「困ったこと」だけではありません。

  • 良かったこと
  • 改善してほしいこと
  • 困ったこと
  • 来年も残してほしいこと
  • 来年も開催してほしいこと

など、肯定的な声も含めて集める。

こうすれば、「苦情受付」ではなく、**「祭りをより良くするための声」**として受け止めることができます。

もちろん、寄せられた意見をすべて公開する必要はありません。

個人が特定される情報や、事実確認ができていない内容などをそのまま公開することには注意が必要です。

むしろ、

「今年は○○について○件の意見がありました。来年は○○を改善します」

というように、主催者が内容を整理して、改善結果を伝える方法も考えられます。


法律や条例については、開催地域のルールを確認する

祭りやイベントの騒音については、全国一律のルールだけで判断することはできません。

環境省によると、2023年度末時点で、拡声機騒音について条例を制定している自治体は43都道府県・137市町村あります。

また、東京都では、祭礼や盆踊りなど地域慣習となっている行事について、一定の条件のもとで拡声機使用に関する規定があります。

したがって、

「祭りだから大丈夫」

あるいは、

「○デシベルなら全国どこでも問題ない」

と一律に判断するのは避けた方がよいでしょう。

開催場所の自治体、会場管理者、必要に応じて関係機関などに、開催前に確認することをおすすめします。

※この記事は、祭り・イベントの主催者向けに一般的な運営上の考え方を紹介するものであり、個別の法律問題について判断するものではありません。具体的な法令・条例の適用については、開催地域の自治体や専門家等にご確認ください。


祭りを続けるために、苦情とどう向き合うか

祭りに苦情が来ると、主催者はどうしても「祭りに反対する人がいる」と考えてしまうかもしれません。

しかし、その声の中には、

「祭りそのものは残してほしい。でも、もう少し配慮してほしい」

という思いが含まれている可能性もあります。

実際、富田林市が公表している意見の中にも、祭り自体を否定するのではなく、拡声器などの音について改善を求める声があります。市も、祭礼が地域の歴史や暮らしと深く関係する一方、周辺住民への配慮が必要だとしています。

祭りを続けるためには、主催者だけが「我慢する」必要もありません。

住民の声を聞く。

主催者の事情も伝える。

できることと、できないことを整理する。

そして、改善できるところは次回に生かす。

その積み重ねによって、祭りと地域との関係を少しずつ良くしていくことが大切なのではないでしょうか。


祭りを「応援する人」も、もっと増やせる

祭りを続けるために必要なのは、来場者を増やすことだけではありません。

準備をする人、運営する人、出演する人、協賛する企業、そして地域で祭りを見守る人。

たくさんの人の力によって、祭りは続いていきます。

だからこそ、主催者への

「今年も開催してくれてありがとう」

「来年も続けてほしい」

という気持ちも、祭りを支える大切な力になるはずです。

Ohanakakeは、祭りやイベントを「見る」だけではなく、「応援する」という参加の形をつくることを目指しています。

苦情をなくすだけではなく、祭りを支える人を増やす。

そして、応援の気持ちを次の開催へつなげる。

祭りを未来に残すために、主催者と地域が一緒に考えられる環境をつくること。

それも、これからの祭りに必要な「対策」の一つなのかもしれません。


【参考・引用元】